昨日、Hulu で観たんだけど、「さいはてにて~やさしい香りと待ちながら~」、中々の良作であった。
大きな事件・・・が、なくはないのだが、未遂事件だし(^^;、物語は珈琲店を中心とした、どこか心に傷をもった人たちの邂逅を描きつつ、地味に淡々と進んでいく。正直、あまり期待せずに観始めたんだけど、結局最後まで一度も間延びした感じも無く観終わった。ずっと観ていられる映画だった。
以下、もろにネタバレなので、ここまで読んで少しでも興味を持った人は、この画面を静かに閉じよう(笑)
主人公は、東京にすむ30代の女性・岬(永作博美)。8年前に漁船で遭難し行方不明となっている父の失踪宣告がなされたことで、石川県の奥能登にある古い舟小屋を相続する。
岬は、そこで珈琲店(喫茶店ではなく、珈琲豆を焙煎して販売する店)をやりながら、父の帰りを待つ。
岬の両親は30年前に離婚しており、岬はその時に大好きな父を捨て、母についていったことがわだかまりとなって残っていた。そのわだかまりを捨てるためにも、父が生きていることを信じ、父の舟小屋で父の帰りを待つのだった。
面倒見の良い岬の元には、心に傷を持つ女たちが集まってくる。
向かいの民宿に住む小学生の娘、その母・絵里子(佐々木希)。娘の学校の担任など。一杯のコーヒーを挟んで彼女たちと心を通わせ、友情を育んでいく
特に、民宿の親子とはいつしか家族以上の絆で結ばれ、あてなく父の帰りを待つ岬の心も癒やされていく。
そんな時、父が乗っていた漁船の一部と、乗組員たちの頭蓋骨が人数分発見される。父の死を認めたくない岬は骨の鑑定を拒むが、その夜、かつての父のように舟小屋でギターを爪弾きながら、父の死を受け入れていく。
幼い頃の岬は、夜の舟小屋で聞く波の音が怖くていつも泣いていた。そんな時、父は側でギターを弾いてくれ、それを聞くと岬は安心して眠ることが出来た。父の死を受け入れた岬は、子供の時のように舟小屋で聞く波の音が怖くなった。しかし、もうギターを弾いて岬を安心させてくれる父はいない。
波の音が怖くなり、また、もう父を待つ必要もなくなった岬は珈琲店を閉じ、あてのない旅に出る。
業者に焙煎機の引き取りも依頼し、もう二度と舟小屋の珈琲店に戻ってくる気はない。そんな岬を、絵里子たちは寂しい気持ちを押し殺し見送る。
しかし、何日か後、舟小屋に岬は戻ってくる。
父を待つ必要はなくなった岬だが、もうその珈琲店とそこへ訪ねてくる人々との交流は岬に取って無くてはならないもの、「かけがえのない場所」になっていたのだ。
・・・という話。
スパイが活躍したり、名探偵が殺人犯を追い詰めていったり、世界が終わるような異常気象が発生するわけでもなく、静かに物語は進んでいく。
でも、冒頭に書いたように全然間延びしたシーンはなく、アクション映画でもないのに目が離せないのだ。
それでいて、押し付けがましい部分がまるでない。
人はこうあるべきとか、これが正義だとか、こういう生き方って格好いいでしょ?とか、そういう監督の思いがわざとらしく発現した映画ではなく、それぞれの感覚で感動し考える自由のある作品だ。
だから色々考えた。
ほんと、ひさしぶりの良作に出会えた幸せな週末であった。
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