日経ソリューションビジネス 2008/7/30 号に載っていた、コロンビアミュージックエンタテイメントの廣瀬CEOの「(ITベンダー等が売ることばかりを意識しているから)短期的に売り上げは上がるかもしれない。だが、長期的に顧客と良い関係を築くことはできない。短期的な商売だけにしか興味のない相手に相談しようというユーザー企業は、多くないだろう。」という発言が気になった。
氏の発言の要旨は、「ITベンダーが自社製品で固めた提案しかしない。他に顧客ニーズにあった良いものがあっても、あえてそれは見なかったことにして『今売らないといけないもの』を押し付けてくるので、まったく顧客のためになっていない」ということで、それには大いに賛同するのだが、氏がその後、「昔のITベンダーはその点・・・」みたいな話をしているところにひっかかった。
「すぐに儲からなくても将来の儲けを考えて・・・」的意味合いだったと思う。
まるで、顧客に良いように使われていた昔の営業マンのほうが立派だった的なことを年寄りに言われると、それはさすがに「年寄りが昔を懐かしんでいるだけだろ?」と思うのだ。
昔の営業マンも、今の営業マンとなんら変わらない。昔の営業マンのほうが、顧客のことを真剣に考えていたなんてこたあない。今の営業マンだって、自分の顧客のことは大切に考えているさ。
単に、昔は景気がよかったから「客の甘えに付き合っていても喰えた」だけのことだ。
そして、そんなぬるま湯につかった商売をしていたから今の世の中、今の日本はこんなになっちゃったのだ。
廣瀬CEOたちの世代が悪いのである。
なのに、「昔の・・・」と言われちゃうとなあ。
確かにここに来て、アドボカシー・マーケティングという顧客への滅私奉公を内包した考え方がちょっと注目を集めちゃいるが、アドボカシー・マーケティングなんて俺に言わせれば愚の骨頂だ。世のコンサルや、年寄り経営者どもよ、流行り文句に飛びつくのもたいがいにせえよ・・・と思う。
そもそも、業務革新にかかるコストは100%顧客が持つべきものなのである。
当たり前だろ。自分たちが良い目をみるための見直しなんだから。
それを、「後で儲かるようにしてやるから。長期的な付き合いしてあげるから」と甘言を弄して、タダで業者の頭脳を使おうとする顧客のいやらしさよ。
それに引っかかって、タダで「良い提案」を行なうベンダーこそ恥ずかしい。
いや、「良い提案」をするのはベンダーの務めだけど、その提案を導き出すのにかかるコストは、きっちり顧客が負担すべきなのである。
どんな些細なことでも、自分たちが必要とすることで業者を動かしたら、そのコストはきちんと顧客側で見るべきなのだ。
そんな覚悟もない顧客に、まともな業務改善なんか出来るわけないだろ。
「昔のITベンダーはその点・・・」という言い方は、それがわかってない甘ちゃん経営者の戯言なのである。