美術・芸術: 2025年5月アーカイブ

4/19 に萩までソロツーリングをした。

目的は、熊谷(くまや)美術館で開催されている春画展『春画(はるが)来た!』を鑑賞するためである。

20250419_kumaya1.jpg
実際のところ、春画にはあまり興味がなかった。

本物は見たことがなかったのだが、書籍などで見る機会はあった。そのディフォルメされた巨大なちんこと毛だらけのまんこにエロスを感じることはなく、むしろグロテスクにさえ思った。

なので、ちょっと文化人を気取ったようなやつが「江戸時代の庶民を虜にした春画のエロスを俺は理解できますよ。これこそ、日本の伝統的で正当なエロス。春画にエロスを感じる感性って粋だよね」と、江戸時代のエロスの理解者みたいな顔で春画を語る姿がホント嫌だった。

エロスを感じたければ、伊賀まこのAVでも見てるわ、俺は。

なので、ツーリングが主目的で、春画展は「萩まで行くんだから、ついでに・・・」くらいの位置づけだったのだ。

・・・が、いいね、春画(笑)

いや、エロスはやっぱり感じないんだけど、単純に「木版画の技術がすごい」・・・。肉筆のものもあるんだけど、浮世絵なのでほとんどが版画。
実は、春画を刷るスタッフに選ばれるのは、浮世絵業界の職人にとってはとても名誉なことだったそうな。技術力の高い者が春画制作の世界に呼ばれたそうだ。

そりゃそうだよね。この髪の毛のような細い線で刷られた陰毛、陰毛、また陰毛。すごい。よくこんな細い柔らかい線を木版画で表現できるな。当時の日本の木版画技術は間違いなく世界一だろうね。実際、見応えがある。良いもの見せてもらいましたわ。

そういう「世界一の技術で刷られた木版画作品」を楽しめるだけでも訪問した意味はあったが、それともうひとつ、当時の絵師が必死で考えた「エロいシチュエーション」を「バカやなあ~」と笑い飛ばす面白さ、これが良い。葛飾北斎の「喜能会之故真通」なんて女と「タコ(蛸)」のまぐわいやぞ(笑)

20250419_kumaya3.jpg
北斎、なんでこれをエロだと思った?あ、でも、今のエロ漫画の世界にも「触手物」ってジャンルがあるな。宇宙人などがタコのような触手でヒロインの身体を弄ぶという物。そういうのが大好きなエロ漫画ファンもたくさんいる。
そういう突飛な設定の日本のエロコンテンツを海外で「HENTAI(ヘンタイ)」と言うそうだが、そのルーツは春画だったんだな(笑)。江戸時代から脈々と続く日本人の HENTAI の血。いいねえ。

そういえば、浮世絵(春画)なんてどれも同じような絵ばかり・・・と思っている人も多そうだが、実は作家によって顔つきが全然違う。だからそれぞれの作家のファンがいる。漫画もそうだよな。アニメ絵みたいなのが好きな人もいれば、寺沢武一が描くTバックの姉ちゃんが好きな漫画ファンもいる。やっぱり HENTAI のルーツは春画や(笑)

ちなみに俺は北斎の描く女が一番好きである(笑)
3/20(祝)。嫁さんと娘が下関である声優のトークショーを観に行くというので、嫁さんたちを送っていったついでにお袋と下関市立美術館を訪ねてみた。
あまり下関まで出かけることもないので、もちろん初めての訪館である。

20250320_shimonoseki1.jpg
なにか所蔵品を観れればいいか・・・と思って訪ねたのだが、幸い、特別展が開かれていた。

「グライズデール・アーツと下関 ライフパーク/人生という芸術の肖像」である。観覧料一人 1,000円を払って入館。公営の美術館は入館料が安くていいよね。

グライズデール・アーツ(Grizedale Arts)というのはイギリスの現代アート団体で、今までに活動内容も色々変化してきているようだが、今は「皆の生活に役立つアート」の創出を理念としているようだ。

そのため、下関の菊川でも古民家を幻術的に再生したり、地元の陶芸家と合作したり、そういう活動を2017年頃にやったようで、その縁で今回特別展が開かれたようである。

・・・が、なかなかこういう「活動そのものが作品」という芸術を理解するのは難しい。
展示も「こういう活動をしました」というのが説明が主で、一応、その活動の中で作り出された陶器なども展示されているのだが、それはあくまで「活動の中で生まれた副製品」という感じで、こう言っては何だが「子供でも作れそう」な素朴で泥臭い作品が多かった。

そのため、お袋なんか「展示品」という認識が希薄になってしまったのか、「現代アートというのはよくわからんねえ」とか言いながら展示されている陶器を普通に家の食器感覚で手に取ろうとしたりして、俺に制止される始末であった(笑)

20250320_shimonoseki2.jpg
そんな中でも良い作品との出会いがあった。グライズデール・アーツと下関の橋渡し役となったのは、下関市(菊川)出身でアイルランド在住の写真家・藤田需子(ふじたもとこ)氏であり、そのため彼女の写真も展示されていたのだが・・・よかったわあ。
なかなか俺好みな写真。この特別展にこなかったら藤田氏の写真に出会うこともなかったかも。やっぱ、美術館巡りは細かくしておいたほうがいいね。

ところで、美術館を訪ねる前にお袋から「現代美術というのは何ね?」と聞かれた俺は「例えば丸い石を3つならべて、これは芸術作品だと主張し、一人でもそれを理解してくれる人間がいればそれは現代アート作品よ」みたいな説明をしていた。そしたら本当に下関市立美術館の庭に「丸い石が3つ並べられた作品」があって、「ほれみい。俺が言うたとおりじゃろう」とお袋と大笑いした(笑)
今年の 1月13日、随分前の話だが、広島市現代美術館の「コレクション展 2024-Ⅲ ハイライト+リレーションズ[ゲストアーティスト:西島大介]」を観た。

特別展「原田裕規:ホーム・ポート」を観たついでに・・・だったけど。(こちらの特別展については、このブログにも書いている

で、感想だが・・・

なんも覚えてない・・・(^^;; つまり、ピンとくる作品がなんも無かったんだろうなあ。

パンフレットの表紙にもなっている小沢剛氏の「ベジタブル・ウェポン・スペシャル」は、「原爆ドームの前で野菜を持った女が立ってる写真」という如何にも現代アートという作品で、広島が舞台になっているのでわずかに記憶があるが、その時も「何が言いたいのか、何を表現したいのか、まったくわからん。ザ・現代アートだな・・・」と思っただけであった。

20250113_hcm3.jpg
西島大介氏についてもあまり存じ上げず、氏が書いたキャラクターを観て、ああ、どっかで見たことある絵柄だなあ・・・と思っただけで心に刺さることはなく・・・。娘が好きな絵柄かなと思って、帰ってパンフレットの氏の絵を娘に見せてみたが「ふーん」という感じで爆死であった。

もちろん、俺に響かなかったからといって、それが作品の良し悪しの判断にはならない。
現代アートは「何を表しているか」を読み解く過程、そして読み解いたとき「なるほど」と納得できることに価値があり、その価値は個々の「観る人」の感性に委ねられるもので、俺にはなにひとつ読み解けるものがなかっただけの話だ。

一応、作品の横の説明も読むけど、それでもなんか納得できなかったものばかりだったということ。まさに「俺には刺さらなかった」だけの話である。
そして、誰一人刺さる人間がいなかった作品は「現代アート作品」とは呼べず、それは「オナニーのティッシュ」である。自分だけ気持ちよかったのね・・・という。それだけの話し。

だから反対に、どんな突飛な素材や造形のものでも、見ただけで「これ面白い」「これ好き」と感じられるものは現代アートではなく、伝統的な「美術作品」だと思うのよ。あ、これは余談。
随分前、今年の 1月13日の話。久しぶりに広島現代美術館を訪ねた。

20250113_hcm1.jpg
広島現代美術館を訪問したのも 2年ぶりくらい?
土日の仕事をするようになってなかなか行けなくなった。

ああ、やっぱ今このブログを見てみたら、2年以上前に「アルフレッド・ジャー展」観にきて以来だ。

今回は、「原田裕規:ホーム・ポート」展を観に。
原田氏は広島出身の作家。いわば里帰り展。
岩国市にも住んでいたことがあるようで、灘から見える山をモチーフにした作品もあった。

・・・が、どうも俺にはピンとこなかったね。
作品の説明文を読めば「ああ、なるほどね」とは思うが、だからといってその意図が全然響かないというか・・・

多分、俺という人間は「映像作品」ってやつがあまり好きではないんだろうなあ・・・知らんけど(笑)
どんな作品を見ても、冗長にしか感じないんだよなあ。映画のような「わかりやすい」物語性のあるものは好きなんだけど。
絵や写真のように「その時」を切り出した作品の方がやっぱりインパクトがあると感じてしまうのよね。

20250113_hcm2.jpg
ただ、「廃棄された写真」を集めた展示作品は面白かった。
テーブルの上に、何千枚、何万枚もの古い写真が雑に置いてあるだけなんだが、観客はそれを自由に手にして観ることができ、そのどこの誰ともわからない人の写っている写真に、観客自らが物語を作っていくことのできる作品。

持っていた人が死亡したり失踪したり、あるいはゴミとして出されたりして、廃棄業者のもとに持ち込まれた写真を、ただ原田氏が集め、まとめてドンっとテーブルの上にばら撒いただけの作品。でも、作品として色々な意味づけや展開のできる可能性のある作品だなあ、これ。

というわけで、ピンとはこなかった特別展だったのだが、それなりに得るものもあった広島市現代美術館でのひと時なのであった。

このアーカイブについて

このページには、2025年5月以降に書かれたブログ記事のうち美術・芸術カテゴリに属しているものが含まれています。

前のアーカイブは美術・芸術: 2025年4月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

月別 アーカイブ

電気ウナギ的○○ mobile ver.

携帯版「電気ウナギ的○○」はこちら